町田康×寺門孝之レクチャー@四日市メリーゴーランドその2

2/21(日)に四日市メリーゴーランドで行われたトークショーのメモ(つづき)です。


町田康による朗読(『猫とねずみのともぐらし』)が終わり、再びその絵本の話に。寺門孝之さんは絵本を作る際、束見本(つかみほん)といって、出来上がりサイズだけど中身表紙とも真っ白な見本にそのままイラストを描いていくそうです。その完成度が凄すぎるため(本文などもコピーして配置するなど、町田康も感心しきり)、寺門さんがその見本を持ってるって最初分からなかったです。ステージ上で手にしていたのはてっきり完成した絵本だと思ってたのでびっくり。(ちなみに、とある本で、荒井良二がやはり束見本に下絵を描いていたのですが、それには色がついてなかったですね)


フェリシモの企画で最初に出版した時はとても小さなサイズの絵本でした。この小さい本のサイズでイラストを考えていたため、今回大きな本(普通サイズですね)で出版が決まった時は、また大きなサイズの束見本を使い(このサイズに合うイラストになるように)、すべて描き直したそうです! 今回は「青」の色が多く、私的には寺門さんの「青」が好きなため、こっちのサイズの方が好みです〜。って、寺門さんが青が好きなのかと思っていたら、マーチダ先生に何色が好きか聞いた時「「青が好き」と言っていたので、青いイメージにした」そうで。え? 町田康に合わせていたの? それに対し、町田康は「そうでしたっけ?」状態…。そ、そんな(苦笑)。「肌色って言わなくて良かった(笑)」とも言ってました。

 
☆去年発行されたミニサイズの絵本



☆初期は特に「青い」本が多かった気がします。


ここでまた『東京飄然』から一部朗読。「人間と猿の境界」の冒頭を。『東京飄然』も好きな本の上位に入るのですが、自分で読んでるだけで面白いのに、町田康のあの語りはより楽しめますね。落語的な間がある感じで。
東京飄然 (中公文庫)
4122052246



質問コーナーに入ると、さらに話がめちゃくちゃになってきた気もしますが、それが面白かったです(苦笑)。なぜか町田康の「聞き間違い」の話になったり(ロメオ・ジリが「無明尻(むみょうじり)」に聞こえたり、車の「バックします」というのが「ガッツ石松です」に聞こえたり?)、階段を一段ずつ数を数えていくと止まらなくなる!?とか、エレベーターが開く時、自分の念力で開けたつもりになる遊びのススメとか。意味分かんないw。ていうか、中学生レベルじゃん!(爆)


町田康は小さい頃から「あきらめる癖」があったそう。「何を言っているかわからない(わかってもらえない」「はみ出た言葉を自然に(自分の中に)入れてしまう」「外国に一人でいる感じ」。なんか、ちょっと分かります…。そしたら、「言葉のアウトロー、門外漢かな」と。キメた感にちょっと笑ってしまいましたが、自分でそう言えるって凄いな、と思ったり。


「人生のモットーは何ですか?」という質問が出て、私はそれ自体が面白くて吹いてしまったけど、町田康は「こつこつ生きる。仕事しすぎない。時間厳守」って言ってましたねぇ。1日の仕事時間は3〜4時間だとか。それであんなに連載持てるの?? 私の仕事(家事)の遅さは何だ? 反省(苦笑)。「時間厳守」ってのも町田康っぽいですね。エッセイ読んでればそれは分かりますw 自宅の鍵は私も早いうちから準備しますねー。でも、荷物が少ないのは意外だった。その点、私は寺門派かも。その寺門さんの人生のモットーは「宇宙全託」だとか。壮大な!と思いきや、なんていうんですかね、ピンチの時に昔のギャラが7万振り込まれていた経験でそう感じるようになったそうな。その流れで、神の話になり、町田康が「神は自分のやりたいことしかしない」「神は人間の都合を聞いていない(聞かない)」と言ったのが印象的でした。


質問は小さい頃の読書体験の話に。町田康は、小さい頃学校で買わされた日本の民話、世界の民話(各8巻ずつ)を繰り返し読んでいたそうです。特に憶えているのは「お風呂に入って出た垢で人形を…」っていうとこまで話して、あぁ、私もそれなんか知ってる気が…と思ったら、寺門さんが「力太郎ですね」と言ってくれたのでスッキリ(笑)。寺門さんは絵本はあまり読んでいなかったそうですが、力太郎は憶えていたみたい。その寺門さんは「七羽のカラス」(グリム童話)を挙げていました。

力太郎 <福娘童話集 きょうの日本昔話>
七羽のカラス グリム童話 <福娘童話集 きょうの世界昔話>


民話など、不条理なものが多いけど、町田康が「(それらを)受け入れることで、人間としての範囲が広がる」「そういう読書体験は必要」と言ったことに、あぁ、そうかぁ…と気づいた。私は不条理なことにいつも反抗していたというか、怒っているというか、それを排除しようとイライラしていた。けど、そんなもん私ごときが何したって在り続けるんですよね。それを受け入れることで、もっと気楽になれるし、人生面白いことが増えるのかもしれない…と少し希望が持てた。そして町田康の著作も、それ意外の映画や本、音楽、すべてにおいてもっと楽しめるんだな、と。いままでかなり損してたかも、と。アサーション心理療法の本で「人生というのは不公平なものだ」「過去と他人は変えられない」とかいろいろ読んだり、実際そんな不条理なことたくさん経験してそうだよなぁと思っていたけど、町田康の生の言葉でそれをあらためて実感(体感?)出来た気もする。遅すぎるけどさ。。


ま、こんな感じでトークも終わっていったのですが、まだメモっておきたいこともあるので、次回に<つづく>のです…。

猫とねずみのともぐらし
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