河合隼雄『猫だましい』読書メモ

猫だましい (新潮文庫)
猫だましい (新潮文庫)
おすすめ平均
stars「世界の猫ばなしを、河合流の心理学で分析?!」
stars猫という生き物の魅力を多角的に分析、自分的にも再確認
stars河合氏に敬意と弔意を表して
starsとろかし猫にやられた私
stars猫好きは必読!

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いま、河合隼雄の『猫だましい』を読んでいるのですが、気になったところがあったのでメモ。町田康の絵本『猫とねずみのともぐらし』の原案であるグリム童話のあらすじが記載されてたんです。長いけど引用します。(※ヘットとは牛脂のこと)

 グリムのなかの「猫と鼠のおつき合い」という話を見てみよう。
 猫が鼠と知合いになり、仲良くしようと盛んにくどいて一緒に住むようになる。冬支度のために、と猫の提案でヘットを壷一杯に入れ、盗まれると困るからというので、教会の祭壇の下に隠しておいた。ところが、猫はヘットが食べたくて仕方がない。鼠には、いとこの洗礼親になってくれと頼まれたなどと、いいかげんのうそをついて、教会に行き、ヘットの薄皮のところをなめる。猫は満足して夕方に帰ってくると、鼠は赤ちゃんに何と名づけたかと訊く。「皮なめ」だと猫が答えるので、鼠は妙な名前だなとびっくりする。
 しばらくすると、猫はまたヘットが食べたくてたまらなくなる。また鼠にうそをついて教会に出かけ、今度はヘットを半分なめてくる。赤ちゃんには「半なめ」と名づけたというので、鼠は何だか変だなと思う。最後は、とうとう全部なめてしまって、赤ちゃんに「丸なめ」と命名したと言う。鼠は変な名前だと思いつつ、何もわからぬまま冬を迎える。
 そこで二匹は連れ立って教会に行ったが、壷は空になっていた。ここでさすがの鼠も納得がいった。名付親とか言って、教会に行き、猫がみんなヘットを食べていたのだ。「初めは皮を、それから半分、しまいに…」と鼠が言いかけると、猫は黙れと怒鳴り、「もう一言でも言ってみろ、こんどはお前を食べちゃうぞ」と警告する。それでも気の毒な鼠は「丸なめ」と言ってしまった。「そのとたんに猫は、鼠にとびかかって、ひっつかまえてひとのみにしてしまった。いいかね、世の中というものはこうしたものなのさ。」

町田康トークショーで大まかなあらすじは聞いていたのですが、すごい話ですね(笑)。町田康がこれを選んだっていうのが「らしい」。「皮なめ」「半なめ」「丸なめ」ってところとか、最後のセリフとか!w なるほどー、これを踏まえてまた町田版『猫とねずみのともぐらし』を読んでみるのも面白いかもしれない。


猫とねずみのともぐらし (おはなしのたからばこ 27)
寺門 孝之
4894325160

☆寺門さんの名前しか表記されてませんが、文・町田康、絵・寺門孝之ということです。


完訳 グリム童話〈1〉さようなら魔法使いのお婆さん (角川文庫)
関 敬吾
4042822010

☆「猫と鼠のおつき合い」が収録されています