川上未映子『あなたたちの恋愛は瀕死』『乳と卵』

乳と卵

乳と卵

☆単行本は近日発売
(『あなたたちの恋愛は瀕死』も収録らしい


彼女の作品は『先端で、さすわさされるわそらええわ』を読んだだけですが(私の感想)、なんかすっかりハマってしまっている。それは、単なる女性性の強い、文体が飛んでて(跳ねてて)面白いとかそういうんじゃなく、そういうありきたりな表面の中に、さらりと哲学的なことを容れ込んでいるから。


先日、『文学界 2008年 03月号 [雑誌]』に収録された、受賞後第一作となる『あなたたちの恋愛は瀕死』を読んだ。なんか切なくもあり滑稽。自分が昔から思っていたことを、こうやって本として目にする嬉しさ。でも、主人公にいれこむほどではなかったかな。


さきほど『文藝春秋 2008年 03月号 [雑誌]』に掲載された芥川賞受賞作『乳と卵』(ちちとらん)を読み終える。緑子の文章にハッとする。<わたし>が思うこと、巻子のところどころもれる言葉にも。女性なら経験するだろう、少女から女性への身体の変化。緑子の想いにその時の自分を投影してみたり。細かく書くと内容を書くことになるので避けますが、とてもきちんと構成された小説で、あれがこれと、これがあれと繋がっている。見事に。一見、ながながと(悪く言えばだらだらと)続く文章に違和感を感じる人もいると思うけど、その文章に無駄はないのだ! 最後はやはり切なくも滑稽かな。読み終えて、タイトルにまたヤラれたというか(卵をらんと読むところ)、そういうことだったのねん、と。


私は、最初に『先端で、さすわさされるわそらええわ』を読んでいたせいか、そんなに未映子(←最近何故か下の名前で呼びたいw)の文体に違和感なく、すらすら読めた。『あなたたちの恋愛は瀕死』でも、どんどん整理されている感もある(そんなことない?私が慣れてきただけ??)。テーマは女性性が多いけれど、『文藝春秋 2008年 03月号 [雑誌]』のインタビューでは、今後、どういう作品を書いていきたいですか?という問いにこう答えていました。

私は人間に興味があるんです。今の私が、人間について語られるのは女性性を通してだったわけですけど、それが今後どうなっていくのか。それから私たちの認識を規定している言葉について知りたいという気持ちもあります。そもそも言葉は他者との関係性の中に発生したにもかかわらず、同時に言葉で意味や気持ちが伝わっているなんてのは全くの幻想かもしれません。でも哲学者のヴィトゲンシュタインが言ったように、そのコミュニケイションがそうした言語ゲームを超えて起爆力をもつ瞬間があるんじゃないかと私は信じてるんです。ってこれも既に言葉ですけれど(笑)

期待してます!
でもって、私が『文藝春秋』をわざわざ買ったのは、この後に語られた彼女の言葉に共感したのが大きい(笑)。

 私たちの世代は、産みたくないというよりも、「産む」ことについて考える時間が、図らずも長くなってしまったんですよね。昔は生理が来たら<子供>から<大人>になり、間もなく結婚・出産して<母親>になった。<大人>の期間はせいぜい十二、三歳から二十二、三歳くらいの十年だった。ところが今は結婚するのが遅くなり、二十年近くもある。二倍あるんですから、考えてしまう時間も悩みも増えるわけです。
 今の私の結論は、考える前に子供をつくらないと子供は出来ないということですね。この時代、避妊も追いつかないくらい燃え上がっているときでないと、子供はつくれないような気がします。私たちの世代、出来ちゃった婚しかないと思いますよ(笑)。


近日発売(文藝春秋社HPによると23日)の単行本『乳と卵』に表題作『乳と卵』の他、『あなたたちの恋愛は瀕死』も収録されている様子(まだ本を確認していないのでアレですが…)。お買い得ですね〜。『あなたたちの〜』が収録された『文學界』は品切れだそうですし。未映子が気になる方は是非。

『乳と卵』川上未映子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS文藝春秋社ホームページ)
↑なんと「立ち読み」もある。しかもあんな場面を〜!って驚いたw

追記

でも、『乳と卵』とかって、男性は正直どのような感想を持つんだろうかと、興味。石原都知事の酷評は、こういうネタというかテーマに対する嫌悪感って気もするなぁ。