ジュゼッペ・ペノーネ展@豊田市美術館

ジュゼッペ・ペノーネの名前は最近知ったのですが、アルテ・ポーヴェラの作家であること、HPの作品写真を見て面白そう!と感じたので豊田市美術館に行ってみました。なんか毎年お盆になるとここに来てる気がするけど…。


展示室に入ってまず目にしたのが、無数のアカシアのとげで表現された人の目や口、手のひらの模様。近づくとそれはただのとげの集まりにしか見えないのですが、一歩引いて見てみると、繊細に並べられているのが分かるのです。目など、今にも動き出しそうな躍動感。次に見たのは「彫刻の場ースギの皮膚」。周囲が数メートルもあるスギの表皮から、その凸凹を写し取ったものをブロンズで鋳造、それが展示室の床に並べられていました。本物ではないのに本物以上の生命力を感じるような迫力…。


床の作品をじっくり見た後は一転、周囲の壁一面に黒鉛で描かれたドローイングが広がります。黒い紙の上に黒鉛という一見地味に見える作品ですが、これも良く見ると、その模様が細胞や皮膚のアップのようにも思え、少し怖くも感じました。1階の展示室で最後に見たのが「宝石箱」と名づけられた部屋。これは上の入場券やチラシで見ていた、いちばん見たかった作品でした。なんかもう「圧巻」というしかなく、自然を守るとか環境運動がどうのこうの言っているけれど、人間は自然よりも全然偉いわけではなく、人間も自然の一部であることが分かったら、自然を人の力でどうにかする(しよう)ということってホント意味ないなと思う…。


展示の後半を見に2階へあがります。

2階へあがった瞬間から広がるお茶の香り。この展示室1というのは豊田市美術館でいちばん大きなスペースで、その壁に一面お茶っ葉が詰められていました。高さ7.7メートル、最も大きい壁面は幅17メートル、全体で長さ約54メートルになるというスケールのでかさ! パンフによると、このお茶っ葉は地元豊田で摘まれたものだそう。す、すごい数ですけど。私は不整脈持ちでいつも呼吸が苦しく感じるのだけどw、お茶の香りが漂い、深呼吸をしたくなるというか、呼吸の大切さというか、そんなことを感じました。また、高校の時、高校の隣がお茶屋さんで(静岡だけに)いつもお茶の香りがこれでもか!というほどしていたので、その当時のことを少し思い出したりしました。香りというのはいつでもタイムマシーンになるというか、時空をこえますね。


「光の空間」には、角材が少し傾いた状態で展示されていました。ガラス窓になった天上から降り注ぐ太陽光を浴び、とても活き活きとしてるように見えました。が、木の真ん中がくりぬかれていて、底には樹液が溜まっています。さっきから「いのち」って何だ? 自分が手術受けるのってどういう意味が?と思ったり…。その部屋の正面には葉脈が描かれた(というかそのものというか…)作品が。これ、小学校の時とか、透け透け状態(葉脈が残る)の葉っぱを作るというのをやったことがあるんだけど、それだよな。葉脈って人間の脈と同じだな、違いはないなと感じました。当時はそんなこと思わなかったけどw

☆参考/葉脈標本
http://www.nat-museum.sanda.hyogo.jp/top/school/sizenkyousitu2/p63_66.pdf
http://www.mfc-online.org/presen62.htm


最後の部屋は「手の中の幾何学」といって、いくつかの不揃いな彫刻が並べられていました。そして壁には写真の数々。写真を見ていくと、その彫刻は、手のひらで作られる空間を表現したものだと分かります。この彫刻はどの写真を再現(拡大)したものなのかを探すのが楽しかったですが、彫刻に刻み込まれているリアルな手(指)にはちょっと怖く感じました。


この展示の後、同時開催の「山田弘和のヘンカデン」展を見て、少し心が落ち着いたかなw。とにかくペノーネの作品のスケールのでかさにびっくりしたり、「いのち」についていろんなことを感じました。臓器移植とかどうなんかな…とか、私の手術はどうなのか?とか。これについて書き始めるときりがないので止めときます(苦笑)。この展覧会は9月の中旬までやっているので近郊の方は是非。また、ペノーネ本人も来る日があるのでちょっと気になってます…。

アルテ・ポーヴェラ「貧しい芸術」の豊かさ

アルテ・ポーヴェラ」は、大理石やブロンズなどの伝統的な美術の素材以外の日常的な事物が素材として用いられた作品について、イタリアの批評家ジェルマーノ・チェラントが1967年に初めて用いた「貧しい芸術」という意味のイタリア語の名称で、「捨てても惜しくはない日常的な事物」というニュアンスが「貧しい」と表現されたのである。具体的には、マリオ・メルツやヤニス・クネリスをはじめとするイタリア人作家の作品を指すが、それは、芸術の枠組みを根本的に変革しようとする当時のグローバルな動きの一環をなしていた。

<代表的な作品>
マリオ・メルツ「15の610の機能」
ミケランジェロ・ピストレット「ランプ」
ルチアーノ・ファブロ「黄金のイタリア」
ヤニス・クネリス「無題」

参考文献/『カラー版 20世紀の美術』