アートフィルムフェスティバル 第一期:松本俊夫 映像のアヴァンギャルド その2

アートフィルムフェスティバルは3日目(於 愛知芸術文化センター)。今日は<幻視の世界>6作品と<虚と実のゆらぎ1>の3作品を鑑賞しました。その後のプログラムは再映で、先日ちょっと寝てしまった『石の詩』を観ようかと思ったのですが、目が血走ったので止めときました(苦笑)…。


<幻視の世界> 『フライ 飛ぶ』『ファントム 幻妄』『ホワイトホール』『コネクション』『リレーション 関係』『シフト 断層』

実験映画の感想ってほんと困るんですよね。観てもらえれば早いと思うので、YouTubeにあった『ファントム 幻妄』をリンクしておきます↓
『Phantom』(1975年)http://www.youtube.com/watch?v=chh3PxJwDf4
実験映画ってこんなんなんですよ〜。目が血走ってしまうの理由がここに(笑)。他の作品も、建物がブロックのようにずれたり心臓のように鼓動したりなんていうフィルムの躍動感が楽しいといいますか。実験映画って難しいイメージがあるし、確かにわけわかんないの多いんだけど、何も考えずに観ても楽しく感じられるので好きなんです。


<虚と実のゆらぎ1> 『スウェイ 揺らぎ』『エングラム 記憶痕跡』『トラウマ』

『スウェイ』では、『西陣』でも出てきた「釘」(?)をお奉りしたお寺が出てきた。あれってどこ? 何? 時間・空間のゆらぎが映像に。『エングラム』。写真の中の写真。モニターの中の自分。もう1人の自分。自分って何?と考えてしまう。『トラウマ』にもご本人登場。『ドグラマグラ』観なくちゃ…(あのお坊さん(に扮した先生)の踊りのシーンに思わず爆笑してしまった)。


引き続きのびゅさんは2プログラム鑑賞。その間、私は2Fのアートライブラリーにて、このイベント関連の書籍特集をチェック。どの本もとても面白いことが載ってました。「へぇ〜、あの作品にはそんな事情が!」なんて。それらは貸し出し不可なので、一部必死にメモりました(笑)。以下、先日観た『西陣』『母たち』『石の詩』に関することです。


西陣』(1961年)

この作品は、「京都記録映画を見る会」が企画したもの。その団体は西陣の中心に位置する堀川病院の関係者が多くいた。そもそも西陣における職業病を探る作品として企画されたのだが、堀川病院で経済的な問題が起こったため、映画は京都市西陣の業界からの資金援助や有志による資金カンパを得てようやく完成を見た。だが、その内容に京都市や業界からは「西陣の姿をゆがめている」などとクレームがつく。もともと企画した京都記録映画を見る会は全面的に支持していたが、(スポンサーの)一方の意見だけを採用するわけにもいかず、京都市や業界の意向に沿ったもう一本の映画を製作することになった。天野新一(新世界プロダクションプロデューサー)のもと、松本の相知らぬ形でスタッフが新たに編成された。このもう一本の映画は『西陣』を撮影した宮島義勇の手によって構成・追加撮影され『織物の街・西陣』というパートカラーの16ミリ作品として完成。これは100パーセントの支持を得、混乱のすべてに終止符が打たれた。
※参考文献『映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考』(森話社

あの内容、ちょっと心配してましたが、やっぱりだったんですね(苦笑)。ていうかスポンサーだったのにあの内容作れる松本俊夫のポリシーが素敵。。


『母たち』(1967年)

当時起こった食中毒事件で失墜したイメージを回復させようと、プリマハムによって企画された作品。依頼主、代理店、製作会社すべてが、この作品の出来栄えに満足したが、クライアントが社内用に使用するヴァージョンには、冒頭に社長が登場して挨拶を述べる場面がある。松本俊夫作品として上映される際には、その部分はカットされている。これは松本の強い希望により実現したもので、この場合も複数のヴァージョンによる解決の一例というわけである。
※『映画は世界を記録する ドキュメンタリー再考』(森話社)より引用

なるほどね〜。そういう事情があったのか!って驚きました。企業用とはなんと贅沢な作品。最後に「プリマハム」って表記があるから十分良いイメージがつくだろうに、なんで昔も今も社長ってしゃしゃり出てくるんでしょうね。困ったもんです。


『石の詩(うた)』

アーネスト・サトウは<ライフ>のカメラマン。四国の庵治村(香川県)の石切り場を撮った写真が700枚ほどあった。もともと、それらを使い彼を紹介する30分番組の企画のはずだったが、TBSのプロデューサーが手に負えなくなり松本に手助けを求めたのが製作のきっかけだという。
「その村の石は、昔から中国などで作られていた楽器にも使われる石なんですよ。日本では四国でしか取れない。その石をぶら下げて叩くと、本当に透明ないい音が出るんです。秋山邦男がその音をテープに録音して、手回しの変速機を使って音を変形させて、それを素材にしてダブらせたりしながらミュージック・コンクレートとしての音を作ったんです。一番最後に歌が出てくるところがあるけれども、それ以外は全部石の音なんですよ。擦ったり叩いたりして。けれども、すごく抒情的なあんな音が石からどうして出るんだろうという。そういうやわらかい美しい音が出る。それらも含めて全部石の音なんですね」
「石工が『石が出来上がってきた』ではなく『石が生きてきました』という表現をしたのが印象的」
※参考・引用文献『川崎市 市民ミュージアム 紀要 弟14集』

短時間で作ったとは思えない出来です(苦笑)。あの石の音はたしかに病み付きになるかも…。インタビューにも載ってましたが、スチル写真で構成される映画といえば、クリス・マルケルの『ラ・ジュテ』がありますね。明日もライブラリに行って、いろいろメモしてくるかもです、はい。