青少年のための実験映画&ビデオアート入門−2日目

昨日の作品がどれも面白かったのと、今日の「衛星(サテライト)三部作」をググったらとにかく重要作品であることが分かったので、連日芸術センター通い(苦笑)。というわけで、今日鑑賞したのは『グッド・モーニング・ミスター・オーウェル』『バイ・バイ・キップリング』『ラップ・アラウンド・ザ・ワールド』の3作品。


のびゅさんに「今日は何を観るの?」と聞かれ、『グッド・モーニング・ミスター・オーウェル』だよと言うと、「オーウェルってジョージ・オーウェル?」と聞かれたんですが、その通りでございます。越後谷さんの本*1によると、この作品は「電子時代の全体主義的世界についてジョージ・オーウェルが著した小説『1984』に対するパイク流の回答である」とのこと。ニューヨークとパリを衛星中継し、同時に多数のアーティストがイベント(パフォーマンス)を行うというもので、上映されたものはイベントの再構成版。衛星中継なんて今となっては珍しくないことですが、当時(1984年=オーウェルの小説の年)にとっては斬新ですよね。しかも同時アートイベントなんて。ちなみに参加したアーティストはジョン・ケージローリー・アンダーソンら。NYからの中継では当時流行ったバンドの演奏があって「懐かしいな、おい」って感じだったんですけど、帰宅後、そのバンド名も曲も忘れてました。サビで…あ、曲思い出した!「♪Hold me now〜(ウォ〜ウォウォ)on my heart〜stay with me〜」ってやつ。バンド名はやっぱわかんね(笑)。他、『さんま御殿』でかかってるラップ(ハービーハンコック)なんかもかかりましたねぇ。アフリカの人たちの映像だったり。それと、今まで観たパイク作品全てに登場しているチェロ奏者で元パートナーのシャーロット・モーマンも存在感ありすぎ(笑)。彼女が映像に登場するとなんかやってくれる!と思い、つい笑ってしまいます…。これまた映像のコラージュが楽しくあっという間の30分でした。


『バイ・バイ・キップリング』。衛星イベント第2弾は、韓国と日本を中継したもの(と思います)。マラソンの中山選手が韓国を疾走していたり、ちょこっと現れた戦時中の映像。ルー・リードのライブや象と何十人という人の綱引き映像(←かなり笑える)、韓国の伝統芸能や日本からは山海塾の映像などが流れ、山海塾の説明は教授(坂本龍一)がしてました。そう、日本のナビゲーターは教授だったのです。教授ファンだったんで嬉しい&懐かしい。肩パットが入っていてズボンの裾は細いという逆三角形の黒い服に黒ぶちの丸眼鏡!(笑) 時代だな〜。えっと、今回の作品はすべて日本語字幕なしなんですが、たびたび「East is East, West is West, Twin shall never meet」と言っているのがなんとなく分かりました。これがキーワードなんだなと。前作『グッドモーニング・ミスター・オーウェル』でも感じましたが、世界はもうボーダレスなんだというメッセージ。「East is〜」は、19世紀末イギリスの詩人であり小説家のキップリングが残した詩句だそうで、訳すと「東は東、西は西、ふたつは決して出会わない」。製作されたのは1986年なんで、もうその言葉は終わってると同時にその後の世界の情勢をも予言したことにもなりますね。*2フィリップ・グラスの『浜辺のアインシュタイン』が流れた気がするのですが私の勘違いでしょうか…(現代音楽ではあるんだけど、誰がどの作品かいまいち理解してないもので…)。


衛星イベント最終章は『ラップ・アラウンド・ワールド』。これは、もう私的には「デビッド・ボウイかっこいい!」しか感想がないです(笑)。デビッド・ボウイとラララ・ヒューマン・ステップスのコラボが素敵すぎるのです!(興奮) これも聴いたことある曲なんですが、タイトル知らず…。真面目に解説すると、これも越後谷さんの本からの引用ですが「ソウル・オリンピックのプレ・イベントとして企画され"スポーツとアートは異なる民族を結ぶ最も強力なコミュニケーション手段"との意図で行われた」衛星イベントということです。ニューヨークを中心に、東京、北京、レニングラード、ボン、リオデジャネイロエルサレムなどの中継で、またもや日本のナビゲーターは教授。それと、浅田彰がパイクの作品についてあの調子で語っている顔がアップになったりして、個人的にウケました。この作品かな、前作かな、小錦、パイク本人も登場。ジョン・ケージの若い頃の映像も流れ、パイクって本当にジョン・ケージが好きだったんだなぁと6本観終わって感じましたね。それと、またD・ボウイの話に戻るのですが、教授とボウイの中継(会話)があったりして、鼻血もんでした(笑)。教授のライブもあり、教授が当時沖縄音楽に傾倒しはじめた時期なのでネーネーズ(3人だけど)も演奏に参加してましたね。懐かしい…。


なんか最後はD・ボウイに夢中になってしまい、支離滅裂な感想になってしまいましたが、全体を通しパイクって凄い才能だな!と改めて認識させられました。彼が亡くなる前からもっとたくさんの作品(映像以外)に触れておきたかったと後悔。今後、名古屋で回顧展などがあったら必ずチェックしなくちゃ!

*1:「映画 あるいは20世紀の思考装置」

*2:棒線部分については、私の理解不足な点を旦那に指摘されたので、本『バイ・バイ・キップリング/ナム・ジュン・パイク著』を読んでからちゃんとコメントします…。言いたいことが伝わらないのって、自分が情けなくなりますね…。しょぼん。