町田康『ゴランノスポン』読了


読み始めたら、最後までやめられないとまらない短篇集でした。短篇集は「六年ぶり」だそうですが、それって『浄土』になるのかな? 町田康の短篇集は、個人的にはもっと前の『権現の踊り子』がいちばん好きなのですが、今回の『ゴランノスポン』、これ軽く超えました!w


なんかもう、突き抜けてる! いやいつもそうなんですが、短篇集としてひとつひとつの作品が集まると大変なことになるんですね。なんかこう、ポポポポ〜ン!っていうか…。


『ゴランノスポン』の妙なハッピー感。でも最後には結局あーなるしw 『二倍』もそう。最近の世間ってこんな感じだよな、と。嘘みたいに見えるんです。本当にみな演技してるんじゃ?と思うこともあります。


ここで書いてあることはありえないことだけど、実際の世の中なんてこのまんまだし、出て来る人物だって、こっちが笑ってるだけでいいの? これは自分では?と思ったりします。なので、私にしては珍しく「帯」に感動したのでしたw

それは誰かの物語ではなく、
あなたの物語である。

現在(いま)を映し出し、私が映し出される、

っつーところが、ビンゴでした。マーチダ先生の本は、たしかにおもしろおかしいんだけど、現在を的確にあらわしていると思うんですけどね。


『一般の魔力』は短篇なのにとっても読み応えがあって面白かったですね。どことなく筒井色もあるような気がしましたが…w こんな人いるし、自分もこの「魔力」にひきこまれちゃってるかな…出しちゃってるかな。おーコワ。でも、『一般の魔力』だったり『ゴランノスポン』の感じが『人間小唄』につながっていったのかなぁと思います。


大笑いしつつせつなくなったのは『尻の泉』ですね。「僕だけではなかったのだ。どの人も多かれ少なかれ尻から泉が出ている。そしていつしかやむ。」これに気づいて「生きるのがグンと楽になった」という主人公にちょっと共感w でも、やっぱり破滅的だよなぁ…。


『末摘花』は源氏物語のマーチダ訳という感じ? たぶん元からそんなに離れたストーリーではないと思うのだけど、マーチダ先生が書くとこんなんになっちゃうの?という新鮮な驚きw そしておもろい。『源氏物語』読みたくなりました。


『先生との旅』は、わたくしの地元名古屋が登場するのでちょっと嬉しいw で、途中でこれはもしかして?と感じつつ、オチはやっぱりそれなんかい!と突っ込んだりもしましたが、あの人、結構いいこと(面白いこと)言ってたよねw 一足す二は三にはならない、というところ。「一階と二階を足しても三階にならないだろ。」「どうなるんですか」「平屋になるんだよ。それを支えているこの世の理屈がなんだかわかるか。」とか…w 


あ、いちばん最初に収録されている『楠木正成』は、知識がないなりに楽しめたんですが、歴史がまったく分からないもので(汗)、分かっていたらもっと楽しめたかもな〜と。にしても、濃いぃ短篇集です。


奈良さんによる表紙も良いですね。「魔力」出てる気がする!w


そいえば、新潮社のHPに、「【刊行記念インタビュー】「ハッピー」と「魔力」の浸透」が掲載されていたのでリンクしておきます。が、『ゴランノスポン』の読後にチェックした方が新鮮に読書出来るかもしれません…w

町田康『ゴランノスポン』│書評/対談│新潮社


残響―中原中也の詩によせる言葉』も、かなり突き抜けてますよ! ただいま読書中です〜。