町田康『おそれずにたちむかえ テースト・オブ・苦虫5』読了

会話が成立しない。文章に書いてあることより、暗黙の了解のほうが優先する。そんな曖昧な日常に活を入れる、おそれを知らないエッセイ集、第五弾。「話がまったく通じません」「助詞ないのも腹立ちますねー」「おまえにだけは言われたくないと言われる」ほか。
(「BOOK」データベースより)

相変わらず楽しいエッセイが一杯のテースト・オブ・苦虫シリーズ。連載エッセイをまとめたもので、単行本発売のあとの文庫版ということもあり、取り上げられている内容に若干のタイムラグがあるのですが、それはそれで面白いです。たとえば、今回は「ギター侍」だったり、「勝ち組・負け組」の話も。


4の時もそう思ったんだけど(id:n_n:20101105:p1)、名付けというかネーミングセンスが面白いです。「名前について風呂屋で」には「小説を書いていてはたと考えこんでしまう問題のひとつに登場人物の名前をどうするかというのがある」なんて書いてあるけど、結構楽しんで名前をつけてるようにしか思えないんですけどね…w で、

削除されたのは、糞、屍、呪、癌、姦、淫、怨、痔、妾といった、確かにイメージの悪い文字で、実際にこんな名前をつける人がいるのかと思うが、こんな突飛な名前がついた人はいったいどんな一生を送るのだろうかと空想するのもまた楽しい。

p.107「名前について風呂屋で」より

というわけで、以下、マーチダ先生の華麗な空想が繰り広げられています。どのエッセイも笑えるんだけど、これ電車の中で読んでたので笑いを堪えるのに大変でした。ネーミングつながりで他にツボだったのが、丼ものの企画の話。

「水死丼」というのはどうだろうか?
意味は、瑞々しいイメージで、食べると死ぬほどうまいと感じる丼という意味である。

p.153「無我夢中でコンサルタント」より

とまぁ、ここでもマーチダ先生の企画力が発揮されていますw 「堕落丼」に「ポセイ丼」、そして「地図丼」…。脱力しました(良い意味で)。


個人的にお気に入りのエッセイは、「助詞ないのも腹立ちますねー」「死んでもなおらないかも」「どうやって判断したらいいのかわからない」「魂のいやし、煩悩のほむら」「笑いの効用」、そして先に挙げた「名前について風呂屋で」と「無我夢中でコンサルタント」かな。どれ読んでも面白いですけどね。


そいえば! 今日『ゴランノスポン』を買って来ました〜。これからじっくり読む予定です(私はスロー・リーディング派です、はい)。


そして、7/22発売予定の『残響―中原中也の詩によせる言葉』も気になります。これはNHKのWEBマガジン(https://www.nhk-book.co.jp/rensai/machida/)をまとめたものなのかなーと思いますが、どうでしょう。マーチダ先生の影響で中也好きになったものですから、連載も楽しかったですが、本として出版されるのは嬉しいです。