町田康『テースト・オブ・苦虫4』読了

テースト・オブ・苦虫〈4〉 (中公文庫)テースト・オブ・苦虫〈4〉 (中公文庫)
町田 康

東京飄然 (中公文庫) テースト・オブ・苦虫〈3〉 (中公文庫)

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このシリーズは1〜3と8を読んだので、これから文庫で昔のから順番に読んでいこうかと…(じゃないと何巻を読んだのか分からなくなる)。というわけで、最近発売になった4を購入。一気に読みました。文庫の帯に「事実か虚構か謎が深まる魅惑のエッセイ集」ってあったけど、ほんとその通りですねw いや、元は事実ということもあるのかな、と思う。それを元ネタに卓越した妄想力を発揮、面白おかしく語っているというか!(それはマーチダ先生の才能)


なんで事実もあるかと思ったかというと、このエッセイの中に事実を見つけたからです。収録されている「ごはんカタログ〜こすぷれ寿司」の冒頭に出てくる「画家の威明次郎君」というのはイラストレーターの寺門(孝之)さんのことだと思います。以前、マーチダ先生と寺門さんのトークショーに行った時、寺門さん本人が「中華料理屋さんで冷やし中華を頼んだら生で出て来た」と言ってたんです(笑)。もう一つのエピソードは寺門さんかどうか分からないけど、寺門さんは他にも面白エピソードを持っているのでもしかすると本当なのかも?(いや、さすがにこすぷれ寿司はないか…w)


また、4月の朗読会(記事/id:n_n:20100522:p1)で朗読していた、みな本音で語ってみると…「本音で生きる」、パンクな歌詞もです・ます調を使えば結構いい人に見えるという「どう書いても嫌な奴は嫌な奴」はやっぱ読んでも面白い〜! あの朗読を思い出しながらまた吹いてしまいました(笑)。


「名が体をあらわすのでノイる」「名前の研究1、2」はマーチダ先生のネーミングセンスが堪能出来て良い(笑)。1の米、清酒篇の「あきたこまち」「むつほまれ」に対抗するお米の名前に、「よめいじめ」とつけたのが笑えた。「ネガティヴなネーミングを導入することによってカスタマーにインパクトを与える戦略である」って、たしかに5音でゴロはいいけどw


「苦悩の週鑑」はマーチダ先生が日頃何に苦悩しているかを表明。「やはり作家たるもの苦悩しないとよい作品は書けない」。こ、これが脱力します、くだらなくて。逆に?自分の悩みもちっちゃいなって思ったり(苦笑)。あと、妙に同感してしまったのが「筋肉の弱り、人生の困り」にあった一節「水泳をするということは水に漬かるということで、水に漬かるということはすなわち全身ずぶ濡れになるということである。全身ずぶ濡れというのは人間にとって不愉快なことであり、そんなことを敢えてするということはきっとなにがしかの災厄を伴うということを自分は右の経験から学んだからだ」。ほんと、不愉快だよね、全身ずぶ濡れって! 私にはお風呂も修業のように感じられるから(笑)。


他、これも朗読で聞いてみたいな〜と思った好きなエッセイは、「ありえないことがありうることはありえない」「今年も偏屈でゴーゴーゴー」「地獄のネガ」です。あ〜、マーチダ先生はこっち側の人で良かった〜って思うw そして、巻末のヒダカトオル氏による解説もとっても良かった(この解説でも引用されてる2人の対談(『音楽と人』)も面白かったですよ)。

音楽と人 2010年 05月号 [雑誌]音楽と人 2010年 05月号 [雑誌]

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☆この号に二人の対談が掲載されてますが、在庫がない様子…