『小説修業』メモ

この前、あまりにも…な感想だったので、ちゃんと書こうと思いつつ、あれをまとめることは私にはやっぱ無理です〜w 当たり前なんですが、その作家が言っていることに共感しなければなんの心の動きもないわけで、そう考えると、基本的にこのお二人は価値観が同じだし、私もそこに入りたいなんておこがましいことは考えてないけど、あぁ…分かるなぁ、そうだよなぁと思うポイントが多々ありました。保坂さんの文章より引用。

 うちで飼っていた猫が思いがけない若さで死んでしまったとき、私は猫が「死によって完全にこの世界から消え去る」という考えを絶対に受け入れられませんでした。話はそれますが、私がそのことばっかり言っていたときに、猫を飼ったことのない人の中で「だって所詮、猫じゃないか。猫ごときでなんでそんなに真剣になれるんだ」と言わなかったのは、友人の樫村晴香と小島先生だけでした。(以下略)…

猫を飼っていた人でもこういう気持ちにならない人もいるし、犬を飼っていた人でもこの気持ちがわかる人もいると思うけど、同じようなこと、心療内科の先生に言われましたからね(苦笑)。「猫が死んでそんなにショックなの?わからない」って。なんかな〜って思いましたけど。義母は「早く処分(火葬)した方がいい」と眉間に皺を寄せまるで汚いものを見るかのごとく言い、氷をたくさん持ってきた…。小島先生の文章からは、ちょっと笑っちゃったところを…。

(略)大阪大学の先生の、宇宙物理の授業は二、三度見たことがある。その先生は一言二言話をなさると、こらえ切れないように笑われるので、ふしぎな気がした。こういう授業をしても、とても分るまい、というのか、それとも、もともと宇宙物理の話は、笑わなくては語ることができない性質のものだ、と思えてしようがない、というのであるのか、よく分らない。何かのときに、先生が自分で笑ってしまわれ、その方に気を取られてしまう、と保坂さんにいったところ、
「笑わない人もいますよ」
と、いった。

そんな先生を目にしたら、私も内容どころかその人がなんで笑うかに気を取られてしまうよな、というか想像しただけで笑っちゃったんだけど「笑わない人(先生)もいる」ってことですか?? 小島先生の勘違いなの?w 「もともと宇宙物理の話は、笑わなくては語ることができない性質のものだ、と思えてしようがない、というのであるのか」という見方がおもろい。けど、本人はいたって本気なのがまた良い…(ところどころそういう場面に出くわしますw)。


以下、保坂さんの文章より。

(略)<記憶>とは場所にもあると言えるんじゃないかと思うのです。<記憶>とは辞書の項目のように誰が調べても同じという性質のものではなくて、響き合う人にだけ現われる。つまり人間は、「記憶を持っている」のではなくて、「記憶を渡り歩いている」。

保坂さんの小説全体にこれを感じます。以下は単純に「へぇ〜」って思ったとこ(笑)。

(略)言語というものはシステムとして個人(自分)に先行して存在していて、個人はそのシステムに参入することで言語を覚えて人間となる。しかしそれでも一人一人の持っている言語は微妙にズレている。そのズレを生じさせているものは、成長の過程での経験もさることながら、生理学的な次元での脳内の化学物質の放出量なのではないか。ともかく「科学物質の放出量」であろうが「経験」であろうが、個人の意志で決められるものではない。それらによって「意志」というものが作られているのだから、それらは意志に先行している。(以下略)

もっと引用したいところ(好きな文章)もあったのだけど、それってこれから読む人の楽しみ減るよなぁと思って自粛。トルストイカフカチェーホフゴーギャン(『われらはどこから来たのか? 何者なのか? どこへ行くのか?』)などについて、小島信夫の『私の作家遍歴』『美濃』などの著作について、保坂和志の『プレーン・ソング』『生きる歓び』などについての対話ももちろん面白いです。


小島先生の文章からの引用がほとんどないのは…どの部分も引用するには中途半端に長いのと、おもしろいからピックアップできない(ついつい読んじゃう)からです…。どこを引用するか決められない〜。ま、保坂さんのもそうなんだけど…。保坂さんの文章って実はとてもわかりやすいんだ!と今回あらたな発見が出来ました(笑)。小島先生の方が一見やさしい言葉を使っている感じがするんですけど、なんか逸らされるというか(自然にやってる。俗に言う天然?)、一筋縄ではいかない感じがちらちらするんですけど…w(それが面白いな、小説のまんまなのかな、と思いました)。すんません、やっぱこんなグダグタな感想になっちゃって。

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