保坂和志×佐々木敦 対談「音楽と文学」メモ(『群像』2009年3月号)

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旦那が図書館で借りてきてくれたので保坂さんと佐々木さんの対談のところをさくっと読みました。さくっとではないか。じっくりと堪能(笑)。この対談には「音楽を考えるときに 小説のできること」というタイトルがついてますが、読後感じたのは音楽も小説もコミュニケーションのためにあるものではないんだなというか。それらの楽しみ方だったり作り方(小説だと書き方?)は、本人の生き方にも通じるなぁとぼそぼそ…(なけなしの脳が考えている音w)。ここらへん、もっと自分自身に軸があると良いのだけど、私はあっちいったりこっちに来たり?無駄にうろうろしてるからなぁ。「まじって」しまってるのかも。保坂さんが苦手なタイプの…(苦笑)。えっと、図書館で借りてるし、ちょこっと引用しておく(コピーするのが面倒なズボラーです)。

と思って、読み返してみてるのだけど、どこを引用したらいいか悩むんですけどー。対談なので結構長文だし…。う〜む。やっぱコピーしといた方がいいのかなぁ。といいつつ書き写そう…。

佐々木 音響派に対応するような出来事が、小説の世界で音楽ほど起きているとはちょっと考えにくいのですが、それはつまり、ことばを書くことと読むこと、という当たり前の基本に、だが思い切りラジカルに立ち戻る、ということになるのじゃないかと。それにだっていろんなアプローチがあって、福永信青木淳悟岡田利規磯崎憲一郎といった作家のそれぞれの試みからは、僕は音響派と同じような感じを受けます。そして彼らに先行する者として、保坂和志の作品からも。(p.114)

保坂 大友さんの本を読んでいると、マッチョさに対する懐疑というか敏感さがあることがわかる。浜田真理子さんの歌についても、声量のある歌い方ができるのにあえて小さな声で歌っていてそこがいいとか。音を演奏者が支配しないという考え方ね。これはベケットが考えていたことと同じで、この考えに出合って僕の気持ちは七〇年代の二十代だったころに引き戻されたのね。佐々木さんの『(H)EAR』という本にも、ベケットが二度出てくる。
 僕にとって文学の出発点はカフカベケットしかなくて、そこに小島信夫を加えてもいいけど、全員主体になれない人ばかり。でも、書くというのはマッチョになりがちなんだよね。
佐々木 書くという行為は原理上、主体性、能動性からけっして逃げ切れはしない。だから文学とは本質的にマッチョなものだと思うんです。でも、そこにどう抗おうとするか、というのが、保坂さんの「小説をめぐって」三部作のテーマのひとつでもありますよね。僕にとってもベケットは、ものを考える上で特別な存在です。主体性を消去するというよりも、むしろ主体の消去の不可能を、そのギリギリの可能性の閾で逆説的に証明してしまった。(p.114-115)

保坂 このあいだ、すごくまともな考え方をする友人と話をしたときに、僕がわざとわからなくしているんじゃないかといわれたのね。そうじゃなくて、わからないようにしかいえないんだといったんだけど。
佐々木 その言い方はすごいですね(笑)。
保坂 相手にわかるように整理してしゃべったり書いたりした瞬間に、自分の中にあったものは消えちゃうんだ。最近そっちに傾きすぎて、どんどんふつうのエッセイなんかを書くのが苦痛になっちゃって(笑)。(p,120)

保坂 コミュニケーションって、音楽程度のやりとりでしかないんじゃないかと思うの。厳密に詰めていったら、たぶん誤解しかしていない。そうじゃなかったら小説家はこんなに苦労しないよ(笑)。伝わるんだったらちゃんと正確に受け止めてもらえるはずなんだから。言葉によるコミュニケーションだって、意味はほとんど伝わっていない。
佐々木 さっきの、それ自体が表現したいこと、というのと同じなんだけど、どうしても人は作品や行為から意味を抽出して、なにがしかの形でメッセージなりに還元しないと受容した気持ちになれないところがあるんだと思う。
保坂 読んだり人と話をしたりするときに、わからない部分が面白いのにね。二、三回繰り返して半分くらいわかるぐらいのほうが断然面白い。(p.121)

これくらいにしとこう、きりがない…(苦笑)。この対談のなかで話題にあがった主な作品や人物名もメモしておく(『日本語が亡びるとき』は保坂さんの評価があまり…なので敢えて入れないでおきます)。ま、私の積読本候補になる本をリストアップということで…。

高橋悠治『きっかけの音楽』
大友良英『JAMJAM日記』『MUSICS』
佐々木敦『ex-music』
・『カフカ・セレクション』(ちくま文庫
ベケット(『モロイ』)
カフカ(『城』)
保坂和志『小説の自由』『小説、世界の奏でる音楽』
・郡司ペギオ(幸夫)

佐々木さんの本、上の本じゃない本が2冊ほど積読本になってる…。あぁ、速読法が身に付くといいのになぁ(苦笑)。大友さんの『JAMJAM日記』はたぶん旦那がいずれ買うでしょう(今まで買ってなかったのが不思議)。あと…郡司ペギオ(幸夫)という方を初めて知りました。『小説、世界の奏でる音楽』にちょっと出てくるみたいですが、大学教授? すっごい気になる。。


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