保坂和志『途方に暮れて、人生論』読了

途方に暮れて、人生論
途方に暮れて、人生論
おすすめ平均
starsミミズの如き、価値観の解体作業
stars必要なのはカネのサイクルから出ること
stars拍子抜け
starsこの著者の小説を知らない人にも読んでほしい

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あとがきにも触れられていることだけど、これ(↓)読んでちょっとほっとした。

《今みたいなこんな時代》を楽しく生きられることより、生きにくいと感じられる方が、本当のところ幸せなのではないか。人生としてずっと充実しているんじゃないか。(「生きにくさ」という幸福 p.48)

これもまたたくさん付箋を貼ったけれども、時間がないので一箇所だけ引用。

 希望や可能性という考え方は、「時間とともに進歩する」という信仰──この考え方は、昔の人が神を信じたと同じ次元での"信仰"なのだ──に乗っている。しかし私の小説の登場人物たちは、進歩したいとか変化したいとか思ってる気配がない。ただ、自分がここにいて、しゃべる相手もここにいる、それでじゅうぶんじゃないかと思っている。「それでじゅうぶんじゃないか」と思えるということは、いまここにいる自分と相手を肯定することだ。(あの「不安」がいまを支えてくれる p.54)


ちなみに、この表紙写真は佐内正史です。あ〜、バッテリー切れる!