池田晶子『私とは何か さて死んだのは誰なのか』読了

私とは何か さて死んだのは誰なのか

私とは何か さて死んだのは誰なのか

う〜ん、読み終わった直後だから余計こう思うんだけど、巻末に載ってた、池田さんが小学校6年生の時に書いたという創作「空を飛べたら」の完成度? つーか、その感性に驚かされました。池田さんは「哲学エッセイ」という分野を切り開いたわけですが、小説の分野にすすんでいたらまた別の才能が見れたかもしれません。いや、絶対に見れた。小さい頃から何も変わってないっていうか。同じ人間がそう変われるものでもないですしね。それに比べて、私ったらなんだ?っていうか、まぁ変わりたくても変われないわけで(代われないのか)。そもそも、私って何だ?ってことですが(苦笑)。


ま、その答えは本文に探してもらうとしてw、このエッセイ集も共感だったり、考えさせられたり(ドキっとしたり)しましたが、結構笑える部分が多かったです。ひげの男性が苦手なとことか、ボルゾイ女の話とかかなりツボでした。こういう笑えるエッセイだけを集めたのも見てみたいなぁ。また、自分の普段の生活をあまり書かない池田さんも愛犬のことになると情熱的になってましたね。私は正直犬が大嫌いなんですが、池田さんがどれだけ「彼」を愛してたが分かって微笑ましいです。私が犬嫌いなのは、その飼い主のモラルのなさもありまして、その点についても語ってましたね。犬を飼う前に試験、ほんとお願いしますよって言うか。ただ、「犬嫌いだと直感的にわかる人の挙動と顔付きというのが、不思議と皆、猿に似ているからである」という一文はちょっと心外です(笑)。私は猿っぽくないと思うんだけどなー。


これで、未発表・未収録の原稿をまとめた「最後の新刊3冊」をすべて読み終わりました。池田さんのこと、ますます好きに、というか、いろんな言葉を遺してくれて感謝という感じです。「善く生きる」こと、「悩むのではなくて考えること」の大切さ、諸々…。ちょうど10歳上ですが、こんなお姉さんがいたら良かったのにと妄想してます(笑)。また、今、生きていたら、昨今の社会問題などにどのように反応してたかなぁと思ったりします。それが聞けないのは残念ですが、きっとこう言うかなぁと、これまた妄想して楽しんでます。今朝の朝日新聞に載ってたんですが、この3冊を出版するにあたり、それぞれの出版社の編集者同士が「どの原稿をどう扱えば生きるのか。話し合いながら決めていった」そうです。確かにこの本もそうだったんですが、選んだエッセイの並びの順だったり全体の構成がとても良く考えられていて、その編集力にも感動しましたね。池田さんのパワーは延々と続いているんだな、と。


池田さんの本を初めて読もうという方にも、このエッセイ集おすすめです(哲学エッセイここにあり)。


以下、例によってメモ(引用)。



 日常の現象から天上の意志への一直線の跳躍、思想と処世との一分の隙もない一致、これが私の形而上学(メタフィジカ)。どこが観念的だろう、どこが空想的だろう、生きていることの何であるかを知ろうともせずに生きることを信じている不確実さに比べれば。うわの空で生きているとはじつは謙虚で、正確に言うと私は、普遍と現象との二重の意識によって、一瞬一瞬を垂直に直覚しているのである。
P30.「わたくし、つまり Nobody」より

今さら思ったんですが、あまりたくさん引用すると、これから読む人の楽しみが減るので、少し引用減らしてみます…。下は、ワールドカップで熱狂している人たちを見てのこと。

私には、そもそも、人が自分を国民である、ある民族である、たとえば日本人であると思うことができるのはなぜなのかが理解できないのである。なぜ人は自分は日本人であると思っているのだろうか。
 私の理解の仕方はこうである。私は池田某である。池田某は日本人である。しかし私であるところの「私」は、「私」なのだから、何者でもない。池田某ではない。したがって、日本人などではむろんない。「私」は日本人ではない。それは何なのだか全くわからない。
(中略)なんで私は日本国民、日本人だからと短絡し、日本ガンバレと熱狂する理由があるだろうか。
p140.「私は非国民である」より

まさにコレです、コレ! 私がオリンピックとかWBC、ワールドカップのあの応援が分からんのは。あそこまで熱狂出来るのが信じられないんですよね…。なにをきっかけに自分を「日本人」と思っているのか、日本人だから何だっていうのかw。


あとの引用…キリがないし、とてもビビっときた部分なんで書くのがもったいないしこれくらいで止めておきます。後半に載っていた「同一性と自由」という作品が個人的には凄いつうか、お経のようでした。ん、なんて説明したらいいものか。これだから私は…(苦笑)。

魂とは何か さて死んだのは誰なのか

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池田晶子『魂とは何か さて死んだのは誰なのか』読了 - 靴紐直して走るだけ

死とは何か さて死んだのは誰なのか

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