武田百合子『ことばの食卓』

ことばの食卓 (ちくま文庫)

ことばの食卓 (ちくま文庫)

なんかですね、最初の方の文章が(想定外に←死語?)ちょっとコワくてびびりましたが、なんていうのか、相変わらずの感性。何が凄いと説明できないのだけど、似たような文章を書いている人(影響を受けていると思われる人)もいるけれど、<絶対に>越えられないと思う。タイトルから想像されるように食べものは度々文中に出てくる。おでん、オムレツ、その他もろもろ…。その度に、そのにおいが漂ってくるような、いや、それは食べものだけでなく、人のにおいだったり、雑踏のにおいだったり、得体の知れないにおいだったり…。味覚というよりも嗅覚が刺激される文章だった。また、観察力(視点)に驚く。表現に驚く。率直な物言いも、彼女が書くと嫌みにならないのが不思議だ。


野中ユリの絵(画)のシュール加減も素敵だった。夢の中に吸い込まれそうな感じ。夢ではなく未来? 過去? 突然ですが、私の超・勝手な妄想一発(笑)。これ、ちくま文庫なんですが、私が持っている他のちくま文庫と紙質が明らかに違うんですね。それは、この絵の独特な色を引き立たせる(発色させる)ためのものなのでは?ということです。マットな質感も良いですし。って、単なる印刷事情かもしれない(笑)。