映像表現の秘密(第3回)

萩原朔美先生(多摩美)による映像講座の3回目。今回のテーマは「ワンシーンワンカットと時間の表現」でした。ワンシーンワンカットリュミエール兄弟が『列車の到着』や『工場の出口』を発表したその時から使われているオーソドックスな(といっていい?)技法であるにもかかわらず、未だに使われてきているのは、じ〜っと「世界を凝視するその力強さ」があるからだろうという話に納得。画面があちこち動く(モンタージュ)のに慣れているからこそ活きてくる手法だし、そいえばハッとするシーンって後々から考えるとワンシーンワンカットのことが多いです。ワンシーンワンカットの特徴的な作品として以前も観た『ライフ』、『ロープ』(ヒッチコック)などをちらり鑑賞。ズビグ・リブチンスキーというポーランドの作家の作品『タンゴ』『イマジン』(←後者はJ・レノンの曲のPV)がかなりツボ。現代美術的実験映画な『事の次第』も面白い(ペーター・フィッシュリ、ダヴィッド・ヴァイス)。ピタゴラなんとかって流行ってるけど、その原点ともいうべきナンセンスアート!(笑)DVDも出てるみたいです。タイヤなどを使ったドミノ倒しは思わず見入ってしまいます…。(���μ���
事の次第 [DVD]


真面目な話に戻ります……。ーーーまた、映画のフィルムは縦に動いて(流れて)いるのですが、それはまるで「砂時計」のようだ、と。まさに「時間の流れをみるような感じ」とはさすが詩人の御子孫(笑)。いや、ほんとに。あ、今思い出したのですが、シナリオをちょっと習いに行っていた時(大昔です…)、先生が「シナリオは時(とき)をフィルムに書くこと」と言っていたような気がします。なんか自分の中で繋がった! 映画って時を刻むものなんだな〜。そしてそれは砂時計のように、さらさらと流れ、始まり、必ず終わりが来る。


前回の「映画の中の火と水と風」の講義で触れられなかった「風」についての映像をいくつか鑑賞。コーエン兄弟の『バーバー』(モノクロの方)のオープニングは、木(葉)の揺れの影が不安な感じを的確に表現されていて、またライティングも絶妙だった。言われてみればそうだけど、気になるシーンというのは必ずそれを裏付ける技術を伴っていますね。『羅生門』では、三船の顔に葉っぱの影がわさわさ揺れるシーン。『生きものの記録』では部屋の中にある雑誌の頁がパラパラと風にふかれてなびくことで、部屋の中に進入してくる風を表現。『モロッコ』のラストシーンの砂漠での風。ディートリヒ演じる主人公の決心を表す演出など、どれも印象的で美しい。


「映画鑑賞」っていうと、とかく(私は)頭でっかちになってしまいますが、な〜んも考えずに観ればいいんですね。そんなことを講義受けてて感じました(文情ゼミの映像の講座も受講して)。特に、「水・火・風」があればなんて。もともと映画にはストーリーのどうこうを求めていませんが、おばかな映画でも小難しい映画でも「このシーン綺麗だな」とか自分が「いいな」と思ったり感じることが出来ればそれでいいかな〜と。そりゃ、その監督についてだったり技術的なこと、歴史的なことを知ってるにこしたことはないのだろうけど、もっと自分の感覚を信じてみようかなと。私は、すべてのことに関して「こだわりすぎる」傾向があるので、もっと楽しめるはずのことを自分で抑圧してしまっています…。最近それをつくづく感じてるので、いろんな面で解放していけたらと思うのでした。


次回の講座(今週末だけど…)は「映画の引用と変容」。映画に引用はつきものなんですが、元の映画とそれを引用した映画の比較が楽しみです。どんな映画がどのように使われているのかな。ポチョムキンゴッドファーザーはベタだもんな。ていうかそもそも何故に引用したがるのかを知りたいです(笑)。