「愉しき家」展@愛知県美術館

前々から楽しみにしていた展覧会が来週末で終わるというので焦り、今日行くことになりました(のんびりしすぎ)。入り口にバーンと、塩田千春の『窓の家』がありました。ホント簡単な固定だけで作られていて、でもしっかりたたずんでいて存在感がありました。この窓は全て彼女が東ベルリンで集めた(拾った)ものだそう。ひとつひとつの窓に歴史を感じました。外から見ると冷たい雰囲気ですが、中に入ると裸電球の明かりがあったかく意外と(といったら失礼か?)居心地が良かった。


中村一美の「破庵」は、傾く家。学芸員さんの話で聞いたとおり、パンフに「少年時代に訪れた母の死とそれに伴う家の崩壊が画家を志すきっかけだった」そうです。その感覚が「斜め」という彼独自のモチーフになっています。この「斜め」感は、私はとてもわかる。正木隆は、濃紺の油絵が印象的(でもちょっと寂しい)。ほとんど黒に見える背景に白く浮き上がるベッド、家…。そして後ろ向きの人。濃紺の強弱で水面がリアルに表現されていたのも凄いなと。この方はこの作品を発表された後亡くなっています。


のびゅさんも「面白かった」といっていた中尾寛の「Nobody Home」という家と椅子の建築模型とその設計図(ドローイング)。私も楽しく模型を覗き込んじゃいました。人の模型の動きが可愛くて!あんな場所でこんなポーズとってる!っていう発見(笑)。 船のような家。といっても秘密基地のような形で(説明難しい)、座って本を読んだり寝そべったりぶらさがったりできるような…。生活するという家ではないけど、こんなスペース(空間)が持てたら面白いな。


やなぎみわは、老いた女性と少女の身体の対比が印象的。彼女の展示コーナーに入ると、風がザ〜ッと吹き荒れる音がBGMとして聞こえていました。それは、展示してあるテントの中に入るとわかります。そこには、ある映像が流れるので、(来週末までですが)行かれる方はお楽しみに。東恩納裕一の蛍光管を使ったシャンデリアは圧巻。全体的にポップな感じ。ピンクの壁や黒いテープ使いは一見下品になりがちですが、なぜか居心地良かった!


ラウンジにあった乃美希久子の、天井から布の袋(ビーズ入り)が垂れてきたり、床がふわふわしてたりする家は子供たちに人気だそうですが、夏休みでなかったので飛び跳ねたりする人もいなく、のびゅさんと二人で上がりこみ、楽しんでみました。私はそこに寝てみたら、ほんと天井から抱き枕みたいな形の布袋(パッチワーク風だったり花柄、アニメのイラストプリントのような布などを使用)がたくさん迫ってくるようで面白かったです。


所蔵品展示室には、西野達の作品がありました。それは彼が飽食の時代の日本のキッチンを作った(再現)したもの。外から見ると、懐かしい雰囲気が漂っていて、思い切り覗き込んでいたら「中に入れますので…」と係のお姉さんに促され、スリッパに履き替え中へ。これがまた外から見るの以上に、落ち着く雰囲気。食器棚の中にはオレンジページ(和風料理特集)だったり「100円で出来る美味しい料理」って感じの本だったり。なつかしの5ポケットえんぴつケースに冷蔵庫のマグネットとメモ。ちょっと汚れたフライパン、鍋。羽がぷるぷる回る換気扇。レース(昔風)のカーテン…。そんななか、壁にピカソの絵(本物)がバーンと展示されてるのがミソ。や、そのピカソが貧しかった周囲の人々を描いたのが「青の時代」。その所蔵品のまわりに、この家を置くことが彼の表現方法なのねとパンフを見て改めてわかった次第です(苦笑)。


他の作家の作品もありましたが、ざっと感想書いてみました。そうそう。私が途中で席をたってしまったのが、ゴードン・マッタ=クラークの、簡単に言うと「家の解体ビデオ」。電動のジーグソーで縦にまっぷたつ、横にまっぷたつと面白い切り方をするそうなのですが、壊してるシーンちょっと見て、自分の家の解体を思い出し切なくなっちゃったのです。家を壊すのって自分を切り裂かれる感覚なんですよね…。でも、全体的にはとても楽しい展示でした。「愉しき」にはいろんな意味があるな、と感じました。