小島信夫『残光』読了


話が進むかと思いきや、また戻って、でも実は一回りして「ちゃんと着地してんじゃん!」という感じでしょうか。


いや、同じ話が何度も出て来るもので、小島先生ちょっとお疲れなのかな?って思ったりw(たしかに体調は万全ではなかっただろうけど)。それに、これどういう風に終わるのかなと思っていたら、思いっきり小説だよ、これ!と驚いて終わったというか。…なんとも説明がつきません(苦笑)。


小島信夫のおちゃめな部分に笑っちゃうところもあったんだけど、読後感はしんみり、かな。本文にも度々登場している山崎勉氏の解説で、そうなのか!と驚いた部分も多々ありました。


解説でも取り上げられていた山登りシーンの部分がこの本の主題にもなっているような気が私はしました(主題、というのも違うかなぁ…)。保坂和志とのトークで、保坂氏が指摘した部分(『菅野満子の手紙』から指摘した部分)。ちょっと長いけど引用します。

保坂 こんな箇所があります。奥さんと二人で山にハイキングに行く。軽井沢の別荘から浅間山に向かって歩く。台風のあとなので、初めての道を通ってみたけれど、このルートは退屈だなというようなことを言っている。そのとき、「彼は妻があとからついてきているのを忘れそうになった。彼女は何分も黙っていた。ときどき彼はスロープを見あげて行先きをすこしみて早く明るいところへ出ないかと思った。ひとり歩くより、二人で歩く方が何かしら気が重いと思った。ふりむくとぴったりと彼のあとにくっついていた。あまりそばにいるので、まるで自分ひとりでいるようにさえ思えた」。
 そうすると奥さんが、「『あなた何を思ったか分るわ』彼女は彼の腰を叩いて休む合図を送った。『こんな中途半端なところで休みたくないけど、あなたのために休むことにするわ』『ぼくも、分るさ』『わたし、ひとりのような気がしていた。だからあなたもそうだと思うわ。きっと、ひとりでのぼっていると、二人でいるような気がするかもしれないわ。これが理想なのかもしれないわ』」。(p.118-119)

このシーンのことも本文でたびたび取り上げられていたのだけど、私はこの本を読んで、この部分が読めて本当に良かった、というのが率直な感想です。正直、集中力が続かず頭がぼーっとしてしまった時もあったんだけど、この話が出て来るとワクワクするというか(私、おかしいのかな…)。


半生?や昔の作品のことを振り返ったりし、それはそれで「へぇ、そうだったのか〜」なんて思う部分もあったけど、なんでか分らないけど、上の引用の部分が頭から離れないんですよね。その部分を指摘した保坂もすげぇな、とかw(※保坂好きな私です)


にしても、保坂と小島信夫トーク、面白そうだなぁ。全文が読みたいなぁ(行けた人がうらやましい!)。もっと他の小島作品も読んでみたいなと思いました。またもや小学生レベルの読書感想文になってしまいましたね…スンマセン(汗)