中原昌也『死んでも何も残さない』

死んでも何も残さない―中原昌也自伝

死んでも何も残さない―中原昌也自伝

『新潮』で前半部分を読んで(id:n_n:20110119:p1)楽しみにしてました。後半部分読んで気になったところ。

最近、僕が人としゃべっていて、つまらないな、と感じるのは、人々がみんなオタクっぽい自閉的な感じになり、すごく保守化しているからである。その根本には、あらゆるものに整理された棲み分けがあり、たとえ、すき間があっても、だれかの意思によってすぐ棲み分けされてしまう。

因果応報の物語を作っているのは神様ではなく自分自身だ。しかし、どうすればこの嫌な循環から解放されるのか。文章を書いたり、物語を作ったりすることは、本当は意味もなくランダムに存在しているものを、必然性があってそのように散らばっている、と証明しようとする仕事だから嫌なのだ。

なぜ、みんな共感し合わなければならないのか。共感など全部うそっぱちだということを率先して理解しなくてはいけないのに、逆だ。本当に腹が立つ。人はみな、なぜ生きているのかよくわからないまま、一人で死んでいく。どう頑張っても人間は孤独だし、ほんとうは何でもない。しょせん、それだけ。

僕は自分探しをしているわけではない。自分で思っているのは、何かよくわからない器の上に目ん玉があって、中に何が入っているか自分でもよくわからないし、何となく外を見ているだけ、ということだ。自分の中身など一生見えない。だから、自分探しなど何の意味もない。

たくさんメモってしまった…。共感なんかという気分も自分にはあるのですが、彼の言葉にはどうしても共感してしまうなぁ。棲み分けというか、ここんとこ人がカテゴライズされてる感じがずっとして、なんなんだ?と。されてるし、自分でもしてるような。それで自分は何処にも入らないし(入りたくないし)、でも私は無謀にもそれに入りたいという気分もあるようで混乱中w


それと、彼が小説を書くのが嫌なのはこういうことなのか〜と、やっと腑に落ちた感じがした。2012年世界滅亡説を信じてるのがちょっと意外だった。この自伝は談話からの構成とのことですが、全体に流れる空気は彼の作品とまるで同じだったように思う(当たり前っちゃそうなんだけど)。


装丁は、100%ORANGE。一見可愛いので、思わずジャケ買いすると痛い目に合うと思うのでお気をつけ下さい。