寺山学会@10/21 覚書き

例の件で怒ってばっかもいられないので、ここで少しまとめておきます。
最初に九條今日子さんのトークがあり、そのなかで「出がけにNHK教育を見ていたら寺山の句が紹介されたのでびっくり」とおっしゃったのですが、見ていた人もいたみたいで、紹介された句は「林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき」とのこと(もし間違っていたらご指摘下さい。この分野は詳しくないので)。学会が行われる日に偶然紹介されるというのも何かの縁だな。と思っていたら、自宅にてその日の朝日新聞天声人語http://www.asahi.com/paper/column20061021.html)でも、「寺山修司」の名があったのでびっくり。ここでは競馬についての文章が引用されていました(以下、10/21付 天声人語より抜粋)。

 「パリ……凱旋門賞だというのに、寝坊しちまった」。競馬評論家としても知られた寺山修司が、日本からメジロムサシが出走した1972年の凱旋門賞のことを、「ヨーロッパ競馬日記」に書いている。「メジロムサシは人気もなかったが気合もなかった」(『競馬無宿』新書館)。この日、メジロムサシは18着だった。


萩原朔美さんの寺山修司の映像に関する講演。私は朔美先生の寺山講座に9月まで通っていたので、その延長といった感じもあったけど、また新たな話も聞けて面白かった。寺山修司がNYに行った際、いろんなものを目にし影響を受けたことは知っていましたが、フルクサス見てたのね。無名のナム・ジュン・パイクのヴィデオに関する作品とか、ジョン・ケージとか。。当時の現代美術にはかなり影響を受けてるはずなのに、彼の(実験)映画自体はまったく別のものであることに、私も疑問に感じてました。実験映画って、はっきりいえば意味がわからないのがほとんどで、それで良しといわれる世界じゃないですか。一つのモノがず〜っと映って終わり、みたいな。なのに、寺山修司の実験映画ときたら、朔美先生いうところの「視覚の悦楽」。イメージがどんどん重なる感じ。「わかりやすい」「サービスのある」映像。「映画の仕組みを指し示すような映画」とも。ホントなんでミニマルな方向をあえてやらなかった(んだろうなぁ)のは何故? そういうアートの流れにも逆らいたかったのかな(あまのじゃくな私ならそう(苦笑))。


名古屋ボストン美術館の館長に就任されたという馬場俊吉さんの「寺山修司の俳句」に関する講演。実際、いくつかの俳句を見ながらのお話でした。こういうのは俳句初心者にとってはわかりやすくて面白いです。寺山修司は、エッセイでもなんでもそうだけど、同じ素材を使って複数の作品を作ったりするのが特徴なんですが、俳句や短歌って顕著だな〜。ここで一つ挙げると

母の畳を汚しやすくて旅の鞄(昭和28年)
祖母の畳よごれやすくて旅の手提(昭和28年)

「母」に対し、「祖母」というのは一代上の存在で、一代上は「客観的に見える」と。その話のなかで、やなぎみわの話が出てきたので、さすがボストン美術館館長!とこころのなかで叫びました(笑)。先日の愛知県美術館でみた作品にやなぎさんのものがありました。「祖母」をモチーフにしている彼女の写真になんとも言えない迫力を感じたものです。それは、「客観的に見える祖母」だからこそそう感じたのかしら…と思ったり。その分野ばかりだけでなく、知識が豊富な人の話はどんどんイメージが繋がっていっていいな。


大学の先生方による研究発表。私の楽しみにしていた「2冊の名言集」についてなんですが、資料がないもので必死に書き留めたものしかなく…。まず、私が考えていた「2冊の名言集」とは違うものでした(苦笑)。てっきり数年前に出た名言集と昔からある名言集との比較だと思ったら、『ポケットに名言を』の初版と改訂版の2冊の比較、でした。その、名言集は以下のように出版されてきたとのこと。

  1. 「青春の名言」(大和書房、1968.3.15)
  2. 「ポケットに名言を」(大和書房、1970.9.20)
  3. 「ポケットに名言を」(大和書房・新装版、1977.1.30)
  4. 「ポケットに名言を」(角川文庫、1977.8.20)
  5. 「ポケットに名言を」(角川文庫、1970.9.20)

これだけあって、1と4で、どのように名言が変わってるかを考察したと。なるほど。で、変わってるのは、アランの名言が8つほど削除、野坂昭如水前寺清子(の歌かな)からの名言も消えたらしい。で、最新のものでは組み方が変わったのか7Pほど増えてるんだって(へぇ〜)。他、いろいろあったんですが、レジュメ中心の解説でポカ〜ン、でした(泣)。


「ラジオドラマから戯曲へ」。ラジオドラマ「山姥」が戯曲「青ひげ公の城」に変容していくのも面白い。「寺山修司の出生年月日に関する指摘」も面白かったけど、大学の中退時期のずれって、高取英さんの本に載ってなかったっけ…。そこまでチェックされてないのかな。ま、いっか。以上、簡単な感想でした。