氾濫(増村保造)

増村保造初体験。原作は伊藤整の同名小説。結構社会派な映画でした。仕事のできる研究者の主人公は会社では重役も努める。社長からは「早く新しい研究を!」とせかされるけど、そんな時間もない。で、頑張って仕事をすれば、家庭での居場所はなくなる。そういう生活が続き、妻との関係も冷めている様子。そんななか、娘は新進の科学者に利用され、妻は若い男にもてあそばれる。主人公はといえば、昔関係のあった女に騙され、金をみつがされ、仕事面でも娘を騙した若い男の研究が採用されてしまい…。一旦歯車が狂いだすと、もう止まらないのねん。金・名誉があるところに人は集まり、用がなくなればポイ捨て。今でもよくこういうことはあるけれど、戦後の経済の成長期にあたるこの時代だからこそ、よりシビア。とても虚しさの残る映画だった。