池田晶子『さよならソクラテス』読了

さよならソクラテス (新潮文庫)
さよならソクラテス (新潮文庫)
新潮社 2004-03
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おすすめ平均 star
star3部作のラスト
star対話篇のパロディ
star今まで生きてきた中で読んだ一番の駄作

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『帰ってきたソクラテス』『ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け』につづくシリーズ完結編。この本でも、すでにおなじみとなったソクラテスとクサンチッペ(ソクラテスの妻)の会話や、ソクラテス対サラリーマン、心理学者、生物学者などとの対話が面白い。念のため書いておきますが、ソクラテス=池田さんでありもちろんクサンチッペ、その他もろもろも…w なかでもやっぱり、クサンチッペの発言は池田さんそのものなんじゃないかと思うなぁ(解説の方も書いていましたが)。その啖呵のきりかたというか、その発言にストレス吹っ飛ぶ感じ。よくぞ言ってくれました!って(笑)。『失楽園』(懐かしいけどw)ブームに関する対話のなかでは

クサンチッペ 笑っちゃ悪いんだけどあたし昔から、心中する人っておっかしくてさー。だって、いくら手つないで抱き合って死んだって、死ぬ時は別々に決まってるじゃないか。手つないで抱き合ったまま、どっか行けるとか思ってんでしょ。なに勘違いしてんのかしら、馬鹿じゃない。
ソクラテス いや、まさにその通りだ、驚くべき勘違いだ。しまった、死ぬときゃひとりだったと、気づいた時には、遅いわな。気の毒に。
クサンチッペ 悲劇のつもりが、ただの無知。

と、こんな感じです(もっと面白いところあるんだけど、誌面の都合上割愛しますw)。


また、シリーズの最後とあってか、「クサンチッペ、世紀末を語る」ではクサンチッペ独り語り! その中で気になったこと。

 みんな、幸せってことが、自分のことでないんだね。他人やら世間やら比べて、自分の方がどうだとか、あいつの方がどうだとか、そういうふうにしか幸せでないんだ。これは不幸なことだよ。人と比べなきゃ幸せでないなんて、こんな不幸なことって、ないよ。だって、その人自身はいつまでも不幸なんだから。自分は決して幸せでないんだから。

ソクラテスの独り語り「ソクラテス、新世紀を語る」「ソクラテスの弁明」も。「新世紀を語る」よりちょっと引用。

「グノーティ・サウトン、汝自身を知れ」、デルフォイの神殿の問いかけが、本来の、宇宙大の広がりで問われるべき世紀が、ようやく始まるのだ。いいかね、生存が存在なら、宇宙の存在とは何か。宇宙が存在するということと、自分が存在するということは、存在するというこのことにおいて同じなのだ。では、自分とは、何か。
 考える人は、人智を超えたものの存在を、ほのかに予感するだろう。いや、今や人は、はっきりと知るべきなのだ。人智を超えたもの、それは、わからないと。わからないということが、はっきりわかると。これぞ無知の知、またの名、叡智、明瞭なる神秘の認識だ。

で、最後はソクラテスと池田某(池田さん)の対話なんですが、これがもう面白くて。


そうそう、なんかレビューに「今まで生きてきた中で読んだ一番の駄作」って書いてある人がいて笑えた。きっとあれじゃないですか。『失楽園』や『脳内革命』『ソフィーの選択』をとっても面白い! 名著だ!とか思ってる人なんじゃないですか? そういう人はたしかにこれ読んだら腹立つと思うので(笑)。にしても、『脳内革命』ってとんでもない本なんですね、本文に少し引用されててびっくりしたけど。あの手の本がベストセラーっていうこの社会に驚愕ですわ。そして、その本をリビングの本棚にどうどうと置いてある旦那実家ってなんなんだろうな〜って思います。もしかして『脳内革命』を読んだことをアッピールしたいのだろか。自分の無知さを晒してるだけなのにさ(爆)。そりゃ実家(その本を読む義父)と合わないわけですよ!


この社会になんか不満がある人、生きにくいなぁと思ってる人には池田さんの本は楽しいかと思います。池田さん、生きてたら、昨今の政権交代などどのように語ってくれたかなぁとたまに思い出してはにやにやしてしまいます。