いしいしんじ『東京夜話』読了。

東京夜話 (新潮文庫)

『とーきょー いしい あるき』の改題版、短編集。『ぶらんこ乗り』以前のいしいワールド。ー神保町。真っ白の学生服を着た老人に出会う「老将軍のオセロゲーム」。その老人は言う。「人の運命は、それぞれ一冊の本に相当するんだ。印刷された版じゃなく、物理的に一冊だけ、という意味だがね」「古書を探しとる連中の大半は、『自分の本』を探しているのさ。世間に耐えられない連中ばかりだよ。ただ、自分の手でなにかを変えようという意思を持っている分、世間に乗っかって生きとる連中よりはましだと思うがね」。なんだかせつない。だけど、古書探しをしてる自分は耳が痛い。


「お面法廷」。ある日、裁判所から起訴状が届く。思いもかけぬことが起き、わからぬまま法廷内に入ると、傍聴席には同じお面をつけた人たち…。そこで繰り広げられていたことはありえない話だけど、妙にリアルな感じ。なんだか寒気が走る。魅力的なダッチワイフが登場する「天使はジェット気流に乗って」、「先生」と呼ばれるホームレスとの交流を描いた「吾妻橋の下、イヌは流れる」他、全18篇。どれも面白かったです。ただ、偉そうにいうなら、いしいしんじの「若さ」がこっぱずかしく感じる時もありました。