ポケットに名言を/寺山修司

ポケットに名言を (角川文庫)

これは、たぶんハタチの頃読んだような気がしたのですが、その時は「なんだよ、人の本から名言を拾ってきてるだけだし、最後に自分の言葉も入れちゃうなんてナルシストだなっ!」とか、反抗的な感想だったと記憶してます。単純に彼の挙げた名言が私には理解できなかったから悔しかっただけだと思うけど(苦笑)。今でも、「ん〜」と頭を抱えてしまう文章もあるにはあるけど、さすがにあれから15年も経ち、私もいろんな経験をせざるを得なく、少し理解出来るように…。


映画の名セリフから始まり、好きな詩、小説からの一節…。映画のセリフにかんしては、ゴダールの『軽蔑』から

ユリシーズは妻の所に戻りたくなかった。だからトロイ戦争をした。
帰りたくないから戦争を引きのばしたのだ。

この部分がピックアップされ、彼の解釈を読み、初めて「そうだったのか〜」とゴダール映画が少し分かった気がしました。この映画、ふわ〜っと感じるところはあったのだけど、ピンと来なかったんですよね。ベルイマンの『野いちご』についてもそう。映画について語ってる本って他にないのかな。探してみよ。


肝心の名セリフは、パっと見、ドストエフスキー太宰治三島由紀夫アンドレ・マルロウからの引用が多い気がしますが、特にドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」、太宰の「晩年」からが多いので、今後読んでみたいな、と。私みたいなんが読んで理解できるか微妙ですが。名言のなかで私がハっとした言葉は、以下の通り。暗くてスミマセン(苦笑)。

 汽車が走ってるあいだ、乗客は止っておる。汽車が止ると、乗客はそこから歩き出さねばならん。走るのも途絶え、休息も途絶える。死は最後の休息じゃそうだが、それだとて、いつまで続くか知れたものではない。
三島由紀夫金閣寺

寺山修司の作品からだと(この本に掲載されてるなかだと)、やっぱりこれかな。

歴史は嘘、去ってゆくものはみんな嘘、そして
あした来る、鬼だけがほんと!
−「毛皮のマリー

あと、他に2つ(苦笑)。

鳥はつねに一つの言葉をとんでいる。
だがわれわれがそれを読みとるのはいつもあとになってからだ。
空にさむい航跡をたどることは「記録」とはいわない。
私にとって記録芸術は、鳥自身になることでしかないのだから。
−「遊撃とその誇り」


あたしはあなたの病気です
−「疫病流行記」